ロンドンで、しんどさと感動の間でもがいた11日間 ②

 

 

 

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前回までのあらすじ

長めのお休みをいただき、母とその友人と一緒に約30年ぶりのロンドンへ行くことになった私。

 

行きの飛行機ではトイレ水漏れのため機内で1時間半も待つことになり、

翌日のNODA MAP(お芝居)では、広瀬すずちゃんを前にしながら睡魔と格闘。

さらに円安&物価高のため、自炊を楽しもうとするがうまくいかず。

しかしそのおかげ?もあり、イギリスのサンドイッチのおいしさを知る。

 

暮らしの質について、ともするとイタリアと比べてしまう私だったが、イギリスの良さを発見できるのか。

そして、果たして私がロンドンでしたかったこと↓は、もれなく遂行できるのか。

 

  • 公園でピクニックして(済)、クジャクと鹿に会う
  • 美術館で名画を見る
  • ポートベローでアンティーク探し
  • スーパーで買い物して自炊(一応 済)
  • ハーブティーを買う

 

今回は、野生の鹿がいることで知られるリッチモンドパークと、

イギリスが誇る広大な植物園キューガーデンでの、灼熱地獄の体験を綴ります。

 

 

※ デジタルデトックスも兼ねた旅だったので、写真は多くはありません。ご了承ください。

 

 

 


野生鹿を見に、リッチモンドパークへ

 

4日目。

大きな窓から光が入り、目が覚めた。

 

今年のヨーロッパは熱波で、私たちが着いた頃にはピークを越えていたものの、イギリスとは思えない暑さ。エアコンもないため、家主が置いてくれた扇風機だけが頼りだった。

それでも昨夜から少し落ち着いてきたようで、今朝はさわやかに迎えられた。わりとぐっすり眠れたと思う。

 

スーパーでお買得だったミニパンケーキと、レモンカード入りのヨーグルトで朝食を済ませた。

パンや焼き菓子、乳製品は、他のヨーロッパ諸国と同じく、毎回感動するほどおいしい。

 

それから私は、ピクニック用のサンドイッチを作った。

昨日おいしさに感動したミールディールズのサンドイッチを再現したくて買っておいた、これまたお買得のハムとチェダーチーズを、薄切りの雑穀パンに挟んだ。

かなり雑に作ったにもかかわらず、おいしそうな匂いがふわっと漂っている。

 

 

さて、今日は自然を楽しむ一日と決めて、まずはリッチモンドパークへ。野生の鹿がいることで知られる、とっても広い王立公園だ。

すでに私の脳内は、鹿とピクニックでいっぱいだった。

 

週初の午前中ということでガラガラの地下鉄に揺られながら、乗り換えなしの約20分、最寄駅に到着。

ここから公園までは歩いて約30分。バスを使いたかったがまだ乗り方がわからなかったので、徒歩で行くことにした。

 

駅前の賑やかな通りには現代のチェーン店などもあり、レンガ造りの古い建物とのギャップが楽しめる。

ゆるやかな坂を上ると、住宅街に入った。

イギリスならではの可愛いお家についつい足を止めながら、真夏の日差しの中を進む。

 

 

ようやくゲートらしきものが見えてきた。

住宅街の行き止まりにしれっと現れた鉄格子を、ドキドキしながら開けてみる。

 

中に入ると、急に森になった。

鹿の絵と、園内マップ、二つの案内板がある。

このあとキューガーデンに行くつもりだったので、そっちの方向に進むことにした。何しろ広いので、間違えて反対方向に行ってしまうと大変なことになる。

 

 

 

私はすぐに、サンダルで来たことを後悔した。

道がアスファルトで舗装されておらず、土のままだったからだ。乾燥のせいで舞い上がる土ぼこりで足裏まで汚しながら、しばらく歩いた。

 

少し行くと、視界が開けて、広大な草原に出た。

ところどころに木が生えているが、あとは荒涼として干し草色が広がるのみ。風が抜けて気持ちがいい。

「嵐が丘」や「ジェイン・エア」の舞台も、こんな感じなんだろうか。

今はまるで地中海のような明るい日差しが降り注いでいるが、曇り空ならもっとそれっぽいに違いない。

 

他にも人はいるが、あまりに広いのでみんなちっぽけで、この荒野に独りぼっちなのが嬉しくて急にワクワクしてきた。

私は、だぁれもいない開けた場所にポツンと一人でいるのが好きだ。

 

 

 

ピクニックにふさわしい木陰を探す。

気づけばそこらじゅう、鹿や他の野生動物のウンチだらけ。なるべく落ちてない所を探すが、ちょうどよい日陰と、ウンチのない所のバランスがむずかしい。

レジャーシートを敷いてくつろぐと、もはやウンチも乾燥しているので、匂いもそんなに気にならなかった。

 

朝こしらえてきたサンドイッチを食べて、再びおいしさに頬がゆるむ。

サイクリングやジョギングしている人が、遠くのトレイルを走り抜けていく。

ヒースロー空港に発着する飛行機がときおり低く頭上を横切っていくが、それも不思議と嫌ではない。

 

食後にゴロンと寝そべると、野鳥たちが近くを行き来して遊び始めた。

風はけっこう強くて、日陰にいるとちょっと寒いぐらいなので、再び日向に出たりを何度か繰り返した。

 

鹿は、いなさそうだなぁ…。

 

こんな炎天下だし、わざわざ鹿も人前には出てこないのだろう。きっとどこかの茂みで寝ているに違いない。

クジャクに続いて、鹿もあきらめることになった。

 

 

しばらく休んでいると、トイレに行きたくなってきた。

私はただでさえトイレが近いので、海外で外出するときは特に、なるべく水分を取らないように気をつけているのだが、暑さのせいもあって、さっきお水を一気に飲んでしまった。

けれど、パークのトイレは汚かったら嫌だし、基本的に公衆トイレは有料なので、細かい小銭がないときはどうなるのかなど、気になることだらけだった。(あとで調べたらわりときれいそうだったしキャッシュレス決済もあるらしい)

 

このあとのキューガーデンは、16時入場のチケットを購入しておいた。そこまで徒歩約50分。

途中、有名なティーハウスでお茶を飲みがてらトイレを借りようとも思ったが、それまでとても我慢できそうにない。

 

私の頭には何度か、もういっそこの公園で野ションしてしまおうかという考えがよぎったが、さすがにそれはとどまった。

ピクニックの後半はもう、トイレのことで頭がいっぱいだった。

 

 

結局、近くの良さげなカフェに寄ることにした。

Google Mapsによると、居心地のよい個人経営のカフェで、手作りの焼き菓子も豊富でおいしそうだ。

本当はスムージーのようなのがあれば飲みたかったが、若い頃のデボラ・ハリーみたいな金髪のお姉さんに、辿々しい英語で尋ねるもうまくいかず(そもそもそのようなメニューはない)、アイスカフェラテに落ち着いた。

Google Mapsの評判通り、コーヒーもおいしく、トイレもきれい。暑さのピークをやり過ごすには、ちょうどいい休憩だった。

 

 

 


灼熱地獄のキューガーデン

 

カフェでリフレッシュして、いよいよキューガーデンへ向けて歩き出す。

 

住宅街を抜けていくコースには、まるでおとぎ話のようなレンガ造りの可愛いおうちが並んでいた。

庭にお花を植えている家も多く、この暑さにも負けず関東では見かけないお花なども咲いていたので、つい見入っては、観察ならキューガーデンでたくさんできるでしょ!と、自らをせかしながら歩いた。

しかし…

この住宅街のお花をもっと観察しておけばよかったと思うことになるなんて、このときの私はまだ知らなかった。

 

 

 

 

キューガーデンに到着。

スタッフの人がオンラインチケットのQRコードを読むと、まだわずかに16時になっておらずエラーになったが、どうぞと笑顔で通してくれた。

暑かったが、歩くことを楽しんでいたので40分以上もかかった気はしなかったが、やはり到着すると一気に疲れを感じた。

 

夏のイギリスは21時まで日が暮れないので、体力が続くのなら、時間を気にせずめいっぱい行動することができる。

全部見るには1日かかるとも言われるキューガーデン。

今日は閉園までたっぷり歩き回るつもりだった。

 

……はずだった。

 

が、暑い。

暑すぎる。

 

緑が多いと涼しいようなイメージがあるが、乾燥しているからか、草も花も干からびがちだし、日陰もあまりない。

まさに、灼熱地獄。

 

入場して早々、私はちょっと嫌になってしまった。

少し歩くと、つる棚のテラス席のある素敵なカフェレストランを発見した。

広大なキューガーデンの中には、いくつかのカフェやレストランもあるのだ。

しかしお昼にピクニックして、さっきカフェに入って、さらにまたカフェで休むのもなんだか気が引けた。

 

とりあえずマップ片手に、メインゲートに向けて歩いてみよう。そう思ってまず辿り着いたのが、ガラスの温室。

とっても素敵なのだけれど、日差しが強すぎてもはや危険な感じさえする。

それでも、せっかくだから!と勇気を出して中に入る。

…が、案の定、観察する余裕もなく早足で通り抜けるのが精一杯だった。

このときの私に必要だったのは、蒸し蒸しの温室ではなく、キンキンに冷えた炭酸水だったのだ。

 

 

 

その後もうろついてみるものの、すでに私は砂漠の旅人。

あの有名な巨大温室の前に広がる池も、まるで蜃気楼。

もはや植物の観察なんてどうでもよい。

誰かお水をください。

 

 

結局、売店で缶の炭酸ドリンク(日本円で約¥700もするが、背に腹は変えられない)を買って、外のテーブル席で休むことにした。

 

ぼーっとしていると、隣のテーブルからイタリア語が聞こえ始めた。

暑さで空耳まで聞こえ始めたかと思ったがそうではない。イタリア人の父親と息子がのんびりと話していた。

その響きを聞いた瞬間、胸の奥がふっとゆるんだ。

同時に、地中海のビーチではなく、灼熱の植物園で水を求めてさまよっている自分が急におかしくなった。

どうやら私は、思っていた以上にイタリアシックになっていたようだ。

もちろん私だって、イギリスを心から楽しみたい。しかし、時期が悪かったせいもあってなかなかうまくいかない。

私はよほどその親子に話しかけようか思ったが、父親が子どもと過ごしているところへ、見知らぬアジア人女性が突然イタリア語で話しかけるのも妙なので遠慮した。

 

 

改めてマップを見ると、植物画のギャラリーがあるようだった。

園内でも、彫刻家ヘンリー・ムーアの展示がいたるところにあったり、本来ならここは植物とアートを一緒に楽しめる、超癒しスポットなのだ。日本にあったら間違いなく年パスを買っていることだろう。

 

 

 

しかし、太陽はまだ全然引っ込む様子がない。

結局、炭酸を飲んだ後も歩き回る気力は起きず、お土産ショップすら見る気にもなれず、アパートに帰ったのだった。

 

後日、ついに私が体調を壊してアパートに引きこもっている間に、母が一人でキューガーデンに行ったのだが、植物画家マリアンヌ・ノースの絵ハガキ集を買ってきてくれて、すごーく嬉しかった。

 

そして、このギャラリーを見に行けなかったことを心から悔やんだ。

 

またロンドンに来ることがあれば、次は絶対に秋を選ぼう。

植物園で、植物より炭酸水を求めてさまよう旅は、もうごめんだ。

 

 

 

 

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